馬場希さんの卒業制作は「古典の紫」。もともと植物が好きだったという馬場さん。庭文化に興味を持ち京都御所の坪庭を知ったことから、源氏物語の世界に触れたことが、このテーマを選ぶきっかけとなった。
源氏物語には多くの植物が登場する。それらを全て調べてみると、重要人物はみな花や色彩として紫色を持っていることに気がついた。花がどういうものかはわかったが、衣服についてはどういう色なのかがわからない。「藤のかさね」とはどういうものなのか、疑問がわいた。
「『藤がさね』だからって、藤を使って染めているわけじゃないという。じゃあ、何で染めたんだろう、と。そしたらそれは「ムラサキソウ」という植物だよ、というのを知って、では実際に染めて、当時の色ってこんなのだったのかなと見ていった」
当時の「紫」を求めて、馬場さんの染色が始まった。椿を採取し、灰を作って、染色を繰り返す。染色は難しかったが、それが面白くもあった。
「ムラサキソウって不思議で、温度が低いと薄い紫になるんですよ。でも高ければ濃くなるのかって言ったらそういうわけじゃなくて、今度は高くなると灰色になっちゃうんです。」
話しながら見せてくれたのは、高温で染めたという布である。ねずみ色のような色をしている。これを「メッシ」――「滅紫」というのだと教えてくれた。
繰り返し染めた何枚もの「紫」。その過程で、温度と染色に必要なアルミニウムの関係が濃度と明度を決めているのかもしれない、そう気がついたときは「ちょっとときめいた」。
しかし課題も残っている。「紫の起源」を探って中国までたどり着いたが、その先がわからない。しかし「紫」という字に含まれる「糸」の意味とは何なのか。今後どうやって調べたものか、検討中だという。
最後に下級生へのアドバイスをきいてみた。
「やっぱり問題意識を持つこと。たとえば、3年生の夏にはもう「こういうことやるんだ」と決めておいて、夏休みに下調べをすることかなと思いました。」
そんな馬場さんはおよそ3年越しの取り組みだった。紫色の追跡は、和紙に美しく綴じられている。
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